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magumaの日常を半強制的に知らしめるページ


by maguma55

終電を逃した果ての人間ドラマ

本日髪の毛を切りにサンフランシスコに行って参りました。
就職活動向けの爽やかな髪型という注文で切って頂きました。

そして、その後ローラとサンフランシスコのUrban Outfitters, Cheese Cake Factory, West Field Mallという黄金のサンフランショッピングコースを満喫した後、朝しっかりとスケジュールを見て確認したCal Trainの終電10時を目指して帰路につきました。

カルトレインサンフランシスコ駅に着くと、なにやら駅にシャッターがおりています。
ん、なんでだ。どっから入るんだと思案しながら近づくと、中の腰掛けにチョコンと座っていた中国系の係員の方が"Nine. Nine. Nine is the last one. There is no train anymore."とチョコンと座りながら熊みたいな目で俺の事を見つめながら教えてくれました。

ヘーそうなんだ、じゃあ帰れないじゃん、と気づいた俺は何とかせねばと思い、何もせずにそこらを歩き回りました。俺みたいな状態に陥っていた人々は少なくなく、取り残された熊の子みたいな目をして方々を歩き回ったり、ベンチに座って途方に暮れたりしておりました。そんな熊の子みたいな奴らがいる一方で、4〜5人でサンフランに来ていた勝ち組は、「お、お前らどうした。そんな置いてかれた熊の子みたいな目をして。」という感じの顔でホイホイタクシーに乗ってダウンタウンに戻っていきます。
そんな勝ち組を尻目に、俺はチーズケーキファクトリーの残飯を見つめながらこれ食おうかなどうしようかなと思案に暮れていました。

そんな負け組のたむろする、カルトレインサンフランシスコ駅にある一人のメシアが現れました。中年のタクシーの運ちゃんなんですが、おい熊の子達よ、一人でタクシーに乗ってサンノゼまで帰るのはちと高いが、5人くらい集めてタクシー乗れば一人$25で連れてってやる、という奇跡のオファーをしてくれました。サンフランからサンノゼまでのアベレージ運賃はだいたい$140。にもかかわらず、5人見つければ一人$25で良いと言ってくれたのです。とり残された熊の子達とメシア・ザ・タクシードライバーは5人のグループを作るのに必死になりました。

結局自分、恐らくサンノゼステイトに通ってるであろう生徒(以下メガネロッカー)、そして陽気なメキシカンの一家3名で5人のパーティーを作り、サンノゼに向かいました。これでやっと我が家に帰れる、良かったと安心していたのも束の間隣に座っていたメガネロッカーがバッグに頭を突っ込んでいるんです。こいつ変な趣味してんなあ、と思ってみていると、なんか気持ち悪いとか言い出しやがってくれたのです。しかし、メシア・ザ・タクシードライバーはそんな状況にも慌てません。「大丈夫か?気持ち悪いのか?じゃあ、これをやる。」と言い、ゲロ袋を進呈。そして更に、「じゃあ何か窓を開けて、何か音楽でもかけようか。」と良いラジオをつけてくれました。本当にいい人です。そこで、メシア・ザ・タクシードライバーが「ラジオの局は何が良い?」と聞くと、「メガネロッカーは897にしてくれ...」とそれはもう消え入りそうな声で半分ゲロ袋に顔を突っ込みながら注文しました。897ってどんな局だろうと興味津々で待っているとラジオから流れてきたのは、なんか葬式で流れそうなヘタレロックでした。もうワーワー言っているんだけど、そのワーワーっぷりが恥ずかしさが半分混ざった感じのワーワー何です。もう本当に微妙な葬式ロックで、こんなん流れてたら、出ないゲロも出てくるがな、と心で思いつつもチャンネル権はメガネロッカーにゆだねたまま走り続けました。

途中で、少し回復してきたのか、メガネロッカーは後ろのメキシカンファミリーに気を利かし、葬式ロックをストップして陽気なメキシカンラジオに変えました。すると、道中ずっと黙っていたメキシカンファミリーは突然流れている曲を口ずさみワーワー歌いだしました。ノリノリです。お陰でメガネロッカーが必死にとどめていたゲロの陰におびえていた車内の雰囲気も一変、タクシーカーニバルスタートです。やはり、メキシカンの人たちは陽気です。いつみても幸せそうな顔をしています。彼らの陽気さのお陰で隣のメガネロッカーも恍惚の表情で寝始めました。メガネロッカーのゲロテロの件も一件落着。メキシカンのハッピーパワーの凄さを改めて知らされました。

メキシカンファミリーはマウンテンビューという所で先におり、メガネロッカーはカルトレインサンノゼ駅で下車、そして自分とメシア・ザ・タクシードライバーはサンノゼダウンタウンへ向かい、無事に到着する事が出来ました。

自分をおろした後、お礼を言うと、「良いんだ。5人で乗れば一人辺りの運賃が安くなるし、おれも稼げるし、皆にとってプラスだろ。あ、あのゲロを吐きそうだった友達も大丈夫だと良いな。」といって、帰っていきました。メシア・ザ・タクシードライバーのオファーが無ければ果たしてどうしていただろうか、という人の優しさに触れた夜でした。
by maguma55 | 2007-09-03 18:13